2013年12月27日金曜日

Vol26 「Vibrating in Unison-同時に振動する時」
日時:2013.11.23 15:00~16:00
場所:遊工房ギャラリー
参加者:河合智子、村田達彦&弘子(遊工房ディレクター)、針谷美香(遊工房スタッフ)、渡邊遥(遊工房インターン)、その他参加者数名
司会:村田弘子
記録:針谷美香
以下概要

遊工房アートスペースギャラリーにて、河合智子展のクリティーク・セッションが開催された。
作家本人、来訪者、遊工房スタッフにより、作品を観賞しながら、作品から得た感想等自由に発言し合い、それに対し作家本人より回答または作品制作過程における作家の意識など聞く機会を得ることが出来た。
参加者より、「はく製が生きていると思ってしまった。物の見方が自分なりにあるのだが、その主観があいまいでかつ無意識であることに気づかされた」という意見が。

それに対し、作家は、「人は何かを目にした時、これまでの自分自身の経験や培ってきた知識を基に無意識にその物を判断してしまっていると思う。曖昧さと曖昧さの間に存在するもの、またデジャブを前にジレンマに陥る瞬間が唯一現実なのではないか?と考えている。写真は現実を見る手段との一つと考え、そして、写真を見る者の先入観を崩したい。しかしあくまで、見る側の“これってなんだろう?”を引き出す趣旨ではなく、それはあくまで先入観を崩す引き金を引くに過ぎないものだと考えている」と興味深い回答がありました。

作家であり自身のギャラリーを主催している参加者より、「アーティストの立ち位置がバラバラなのに、合理性という基準でひとくくりにされた展覧会が全国で多数開催され、結果見る側が疲れてしまっているという昨今の美術界の現実がある」言った発言から、現在の日本における美術の現状や、今後の美術の在り方などにまで議論が広がりをみせた。

2013年11月27日水曜日

Vol 25 「On Foreign Ground」
日時 2013.10.24   1600-17:30

展示タイトル(期間):「On Foreign Ground(2013.10.16-27)  
展示作家: スザンヌ・ムーニー 参加者:スザンヌ・ムーニー、アルノー・ガリージア(遊工房レジデンスアーティスト、フランス、レジデンス1)、本江邦夫(多摩美術大学教授)、村田達彦&弘子(遊工房ディレクター)、針谷美香&ジェイミ・ハンフリーズ(遊工房スタッフ)、他 進行:ジェイミ・ハンフリーズ
記録:ジェイミ・ハンフリーズ、針谷美香


クリティーク・セッション概要
以下Q&A



スザンヌ:ここで発表した作品は以前の作品と関連しています。そこで、作品の制作過程についていくつかお話したいと思います。私は、新しいアイデアを初めて挑戦しています。最初ドローイングの展示する意向で昨年このプロジェクトをスタートしましたが、原案から離れ、このような写真とデジタル・イメージの一連の作品を発表する事にしました。

みなさんが見ている写真の中の風景は、私が14歳か15歳の時初めて訪れた場所です。人間はどのように、自然と人が創った物を区別しているのだろうかと言ったような、景色と我々との関係性に興味があります。東京に4年以上暮らした後、新たな視点を携えアイルランドの景色を再考するようになりました。そして、今年2月、北アイルランドのこの場所を再度訪問しました。ここで見られる自然の形態とそれらの幾何学的な外観は、強く私に東京のような都市の景観を思い出させました。私がここで作品としてそう作りたかったものは、この繋がりです。

アルノー:この作品について説明してもらえますか?この作品だけが、どうしても理解できないので。



スザンヌ:他の写真では、私はどのように見る者がこの景色を認識するかに興味があります。歴史的に、これら自然の形状は人々に、人間の手によって作られた物を連想させてきました。このデジタル・イメージの作品では、私自身によって作成された写真がどのようにこれらの景色イメージと関連付けられて見られるかに興味があります。すべての石の形と表面は反対側の壁にある石の作品から始まっています。見てわかるように、真ん中にある石は基準となるような一定の形をしていて、一方その他の石は周りに一致するように調整されています。紙の選択を考えた結果、画像がシリーズの他の写真のように自然に見えます。


アルノー:私は今からこの作品がどのような方向に向かって行くのか興味があります。

スザンヌ:これはある意味私が将来に渡って探求していく作品になるでしょう。次の作品で、人々が山に登る動機と我々の景色との関係性の両方を探求しながら、スカイツリーの頂上からの景色と富士さん頂上からの景色を比較研究したいです。


達彦:パノラマ・ショットよりむしろ岩自身をクローズ・アップして見せる事を今まで考えたことはありますか?

スザンヌ:はい、私はそのへん考慮しました。しかし、私はここで発表した場所に前後関係を与え、人間との関係性を探索することが重要であると感じました。

それゆえに、私が遠くに映るこの写真を使いました。



弘子:これらの作品に選んだ景色はとても強いインパクトを持っていますが、どのように、遊工房ギャラリーの中で、あなた自身の作品として見せる難しさを克服しましたか?

スザンヌ:これは、本当に難しい問題で、現在摸索中でもあります。

この展覧会で個人的な玄武岩の研究も含めようと決めたこと、そして、なぜデジタル・イメージを通して新しい風景を創造する方法を探索し始めたのかという理由でもあります。



参加者:このデジタル写真は特に面白い。何通りもの探索の仕方があるように思います。
 

2013年11月20日水曜日

Vol24 「City Dwellers:Urbanites of Tokyo PJ6581 Part3」「Fading in」



日時 2013.9.22   1600 

展示タイトル(期間):「City DwellersUrbanites of Tokyo PJ6581 Part3(2013.9.18-22)  展示作家:AdeKhai
展示タイトル(期間):Fading in」 (2013.9.7-29)
展示作家: 土方大

参加者:展示作家、村田達彦・弘子、椛田有理、村上綾、村上郁、池田哲、他
進行:ジェイミ・ハンフリーズ
記録:椛田有理、針谷美香



Khai作品コンセプトの説明
作品を通したゲイ・カルチャーの可視化。
日本での滞在中、ゲイ・コミュニティー(新宿2丁目、和田堀公園など)をリサーチ。ゲイに対して厳しいシンガポールより日本はゲイに対し理解ある社会と思って来日したが、東京でも存在自体隠されていると感じた。ゲイに対する偏見はネガティヴなものであるため、あまり直接的な表現は意図的に使わないようにしており、象徴的な扱いに留めている。

以下QA
参加者:作品に登場した怪獣のチョイスに理由はあるのか?
Khai:怪獣は小さいころTVで見たもので、その中でもポピュラーなものを選んだ。ゲイを怪獣というモチーフを使って表現し、かわいらしく描くことで怪物のように排斥されがちなゲイの姿を表現した。
参加者:リサーチの結果、東京とシンガポールのゲイの違いは感じたか?
Khai:東京のほうが自分自身がゲイである事を隠しているように感じた。
参加者:展示作品の大きさは、スペースを見て決めたのか?前から決めていたのか?
Khai:特に決めてはいなかった。展示の際の設置場所(2人で1つのスペースを使用しているので)については、連日Adeと話合いを設けた。最初、迷路の様な展示にしようかという案もあった。



Ade:作品のコンセプトの説明
シンガポールの都会・混雑・汚染を表現。Ade自身がOCD(強迫性障害)を患っているため、作品をつくることで症状を改善したいと思っている。
コラージュ作品は、電車に乗った時に受けたインスピレーションをもとに、駅にあるチラシを集めて制作、電車の窓から見える街の混雑した様子を表現。コラージュという技法の「集合」的な要素も、扱う混雑というテーマになぞらえて選択している。
ビデオインスタレーションでは、人のいない映像をあえて撮影し、騒音だけで街の喧騒や人々で混雑している様子を表現した。
木を使ったインスタレーションは、集合され構築されるイメージをモニュメント的に表現している。

以下QA
参加者:ビデオに人が写っていない=ゲイが表に出ないとうKhaiの作品とリンクしているのか?
Ade:特にリンクしていない。
参加者:なぜ、コンクリートの建物の重なり合いを表現するのに、木を使ったのか?
Ade:コンクリートのビルを表現するのにあえて有機的な素材である木を使った。
作品のテーマやコンセプトを際立たせる為、相反する素材を使用し表現した。(例:コンクリートのビル群が重なりあっている様子を、有機的な木材を使用しインスタレーションで表現。)

土方:作品コンセプトの説明
明るい方へ膨らんでゆくもの、明るくなってゆくものをイメージし、アプローチをかえてそれぞれの作品として発表。素材への関心があり、素材そのものがもつ魅力を引き出し、提示している。尿素や虹彩があらわれる素材など、特殊な素材への関心もあり、虹彩の作品は鑑賞者の立ち位置によって変化するというインタラクティヴな要素もある。それぞれの作品は独立しつつも関連し、物語的に連携する展示として構成している。

以下QA
参加者:尿素を使った作品(とても綺麗な結晶)に、パーティーモールというチープな素材を使ったのは特別な理由があるのか?対比は面白いと思った。
土方:パーティーモールを使った理由は、コミュニティーの中で楽しかった思い出(クリスマスなど)、集合体をイメージしたため。「楽しい」素材というつもりだったので、チープな素材を使ったという意識はない。
参加者:下の黒いマットは作品の一部か?
土方:意図していなかったものであるが、今は作品の一部と考えている。
参加者:写真と立体物の関係性が良くわからない。(写真とその前に置かれた2対の鉄くずとボンドによる作品)
土方:意図せず出来たもの、二次的派生した物という点が共通している。
(写真は冷凍庫の中に発生した霜、切削したときに発生する鉄くずにボンドを付着させた作品)
参加者:尿素の結晶の作品からはオーガニックのようなイメージも受けるが、ダークサイドのイメージも感じた。
土方:形としては、気持ち悪い、得体の知れない物をイメージ。素材はポジティブ、形は気味の悪さを表現した。形はいびつなサークル。粘土で作ったを握りつぶしたイメージ。大きさ、形状は搬入時に決めた。表面のアプローチも、そもそもフレームを見せるつもりはなく、色のコントロールはしていない。色はモール自体の色味を結晶が吸い上げることによって発生する。

2013年7月18日木曜日

Vol.23 「訪れ」 & 「Robotic Love Project6581 Part1 」

日時 2013.7.18  
展示タイトル(期間):「訪れ」 (2013.7.17-28)
展示作家:レネイ・エガミ
展示タイトル(期間):「Robotic Love Project6581 Part1」(2013.7.17-21)  
展示作家:シーユン・ヨー、ジャスティン・リー
参加者:展示作家、村田達彦・弘子、椛田有理、村上綾、村上郁
進行:進藤詩子   
記録:針谷美香、進藤詩子

レネイ・エガミ


Project 6581

<シーユン•ヨー>
シーユン:2年前にInstincのディレクターとしてリサーチレジデンスを行った。交流プログラムの実施を通して関係を継続したいと考え、 プロジェクト6581(名称は両国の国際番号をあらわす)を立ち上げた。今回はアーティストとして滞在制作を遊工房で行い、ロボットと人間のコラボレーション、そして、 印刷工場を継いだ知人の協力を得て平版印刷機を使った制作となった。
来訪者:ロボットとのコラボレーションでは、どの程度作家としてコントロールする部分があったのか。
シーユン:シンガポールで購入したロボットにブラシや枝を取り付けて、床に敷いた紙の上を自由に走らせた。気に入ったマークだけでなく。ビジュアル的に普段なら使わない部分も取り込んだ。最終的に選んだ幾つかのマークをPhotoshopで編集したものを、印刷所に持って行った。
郁:知人の方が印刷したのか?
シーユン:先代から工場で働く技術者が刷ったが、私はイレギュラーなオーダーを出したので、初めての経験することも多かったようだ。複数の色(CMY)をローラーに敷いてもらったり、かすれても止めずに刷り続けてもらったり。500枚刷って、選んだ40枚を今回タイル上に展示している。また、過程で偶然生まれた興味深い刷りも別途壁に展示した。
詩子:マークや印刷物をセレクトする基準は?
シーユン:サンフランシスコの美大時代、抽象表現主義に影響を受けた。伝統的な墨絵を、筆を使わずに描く事をしている。例えばローラーブレードを使う等して。ランダムなマークを好んで取り込んでいる。テストプリントの方が面白い結果に成る事もあり得る。
ジャスティン:安い紙の方が高級紙より良い結果を生む事もあるだろう。
郁:木に印刷した作品はテイストが異なるが?
シーユン:世界堂で見つけたマテリアルで、木目の感じが日本らしいと感じたので使った。スタジオでの制作途中に気付いた扉の素材感を写真はとらえている。また、プロジェクションを低い位置に投影しているのは、制作は地面を見下ろす形で行っていたからである。

<ジャスティン•リー>
ジャスティン:前回の福岡県糸島市のStudioKURAでのレジデンスが、シンガポールと全く異なり、目の前に田んぼがある、大変自然豊かな環境であった。また、動物もとても身近な存在で、鶏が扉をのっくしてきたり。そういった体験を今回の制作に反映し, 人間と自然の関係を改めて見つめたかった。遊工房も自然を近く感じる場で、善福寺公園での葉をモチーフにした作品は、人工的に空けた穴と虫食いの穴を並べて、自然は人間だけでなくすべての生き物の命を繋ぐものだという気づきを作品にしている。
弘子:その他のインスタレーション作品は?
ジャスティン:砂浜に思わず文字を書く様に、土を用いて自分の思いを書いた。また、靴の作品はお気に入りで、近所で買ったのだか、子供時代は大人に成ってからより、自然が近い存在にあったと思う。
詩子:日本語の使い方も素敵だと思った。
ジャスティン:エマさんが訳してくれた。また、ユーモアを含めるように心がけている。なぜなら人生はさもなければ、つまらないものになってしまうから。人間は思う様に行かないもの対して、いらだち、追い出してしまう。動物達をテリトリーから追い出すように。
シンユー:パックマンのアイコンがあるが、ロボットを使う事は意識してか?
ジャスティン:鳥のイメージもそうだが、作品に役立ちそうな画像を収集していて、そこから今回の展示の為に使った。入り口付近の犬の作品は前作だが、今回のテーマに合っていると思い展示する事にした。また、今回の展示作品は、日本人の作品と思われる事が多かった。無意識に影響を受けたのかもしれない。
達彦:次回は日本の作家がシンガポールへ向かう。自然環境の異なる都市でどのような作品が生まれるか興味深い。


記録後記
今回は、レネイとのセッションは、新しく取り組んでいるリサーチの初期段階にあることを配慮し、本人の希望もあって、オンラインでの対話の詳細の掲載は行なっていない。3ヶ月の長期レジデンスを、未知なる新しい制作の方向を模索する機会として妥協することなく取り組んだレネイ。一方、3週間強の短期レジデンスを、具体的なプロジェクトやアイディアを可視化する機会として、作品完成までに明快なステップを確実に辿り切ったシーユン&ジャスティン。対照的な二組のレジデンス活動は、レジデンスと一言でいっても、様々な活動の内容がそこにはあることを示している。そして、両極のスタンス(思索/リサーチと制作/発信)からレジデンスに取り組んだ二組は、それぞれに充実した異なる経験を得ていったのではないかと感じた。