2013年7月18日木曜日

Vol.23 「訪れ」 & 「Robotic Love Project6581 Part1 」

日時 2013.7.18  
展示タイトル(期間):「訪れ」 (2013.7.17-28)
展示作家:レネイ・エガミ
展示タイトル(期間):「Robotic Love Project6581 Part1」(2013.7.17-21)  
展示作家:シーユン・ヨー、ジャスティン・リー
参加者:展示作家、村田達彦・弘子、椛田有理、村上綾、村上郁
進行:進藤詩子   
記録:針谷美香、進藤詩子

レネイ・エガミ


Project 6581

<シーユン•ヨー>
シーユン:2年前にInstincのディレクターとしてリサーチレジデンスを行った。交流プログラムの実施を通して関係を継続したいと考え、 プロジェクト6581(名称は両国の国際番号をあらわす)を立ち上げた。今回はアーティストとして滞在制作を遊工房で行い、ロボットと人間のコラボレーション、そして、 印刷工場を継いだ知人の協力を得て平版印刷機を使った制作となった。
来訪者:ロボットとのコラボレーションでは、どの程度作家としてコントロールする部分があったのか。
シーユン:シンガポールで購入したロボットにブラシや枝を取り付けて、床に敷いた紙の上を自由に走らせた。気に入ったマークだけでなく。ビジュアル的に普段なら使わない部分も取り込んだ。最終的に選んだ幾つかのマークをPhotoshopで編集したものを、印刷所に持って行った。
郁:知人の方が印刷したのか?
シーユン:先代から工場で働く技術者が刷ったが、私はイレギュラーなオーダーを出したので、初めての経験することも多かったようだ。複数の色(CMY)をローラーに敷いてもらったり、かすれても止めずに刷り続けてもらったり。500枚刷って、選んだ40枚を今回タイル上に展示している。また、過程で偶然生まれた興味深い刷りも別途壁に展示した。
詩子:マークや印刷物をセレクトする基準は?
シーユン:サンフランシスコの美大時代、抽象表現主義に影響を受けた。伝統的な墨絵を、筆を使わずに描く事をしている。例えばローラーブレードを使う等して。ランダムなマークを好んで取り込んでいる。テストプリントの方が面白い結果に成る事もあり得る。
ジャスティン:安い紙の方が高級紙より良い結果を生む事もあるだろう。
郁:木に印刷した作品はテイストが異なるが?
シーユン:世界堂で見つけたマテリアルで、木目の感じが日本らしいと感じたので使った。スタジオでの制作途中に気付いた扉の素材感を写真はとらえている。また、プロジェクションを低い位置に投影しているのは、制作は地面を見下ろす形で行っていたからである。

<ジャスティン•リー>
ジャスティン:前回の福岡県糸島市のStudioKURAでのレジデンスが、シンガポールと全く異なり、目の前に田んぼがある、大変自然豊かな環境であった。また、動物もとても身近な存在で、鶏が扉をのっくしてきたり。そういった体験を今回の制作に反映し, 人間と自然の関係を改めて見つめたかった。遊工房も自然を近く感じる場で、善福寺公園での葉をモチーフにした作品は、人工的に空けた穴と虫食いの穴を並べて、自然は人間だけでなくすべての生き物の命を繋ぐものだという気づきを作品にしている。
弘子:その他のインスタレーション作品は?
ジャスティン:砂浜に思わず文字を書く様に、土を用いて自分の思いを書いた。また、靴の作品はお気に入りで、近所で買ったのだか、子供時代は大人に成ってからより、自然が近い存在にあったと思う。
詩子:日本語の使い方も素敵だと思った。
ジャスティン:エマさんが訳してくれた。また、ユーモアを含めるように心がけている。なぜなら人生はさもなければ、つまらないものになってしまうから。人間は思う様に行かないもの対して、いらだち、追い出してしまう。動物達をテリトリーから追い出すように。
シンユー:パックマンのアイコンがあるが、ロボットを使う事は意識してか?
ジャスティン:鳥のイメージもそうだが、作品に役立ちそうな画像を収集していて、そこから今回の展示の為に使った。入り口付近の犬の作品は前作だが、今回のテーマに合っていると思い展示する事にした。また、今回の展示作品は、日本人の作品と思われる事が多かった。無意識に影響を受けたのかもしれない。
達彦:次回は日本の作家がシンガポールへ向かう。自然環境の異なる都市でどのような作品が生まれるか興味深い。


記録後記
今回は、レネイとのセッションは、新しく取り組んでいるリサーチの初期段階にあることを配慮し、本人の希望もあって、オンラインでの対話の詳細の掲載は行なっていない。3ヶ月の長期レジデンスを、未知なる新しい制作の方向を模索する機会として妥協することなく取り組んだレネイ。一方、3週間強の短期レジデンスを、具体的なプロジェクトやアイディアを可視化する機会として、作品完成までに明快なステップを確実に辿り切ったシーユン&ジャスティン。対照的な二組のレジデンス活動は、レジデンスと一言でいっても、様々な活動の内容がそこにはあることを示している。そして、両極のスタンス(思索/リサーチと制作/発信)からレジデンスに取り組んだ二組は、それぞれに充実した異なる経験を得ていったのではないかと感じた。