2013年4月18日木曜日

Vol.22 「ジェイミ・ハンフリーズ個展」、「名高い装飾品」&「世界制作の方法」

日時 2013.4.18 
展示タイトル(期間):ジェイミ・ハンフリーズ個展 (2013.4.12-21)
展示作家:ジェイミ・ハンフリーズ
展示タイトル(期間):名高い装飾品 (2013.4.12-21)  
展示作家:マーガレット・ランゼッタ
展示タイトル(期間):世界制作の方法 (2013.4.12-21) 
展示作家:デイビッド・パッカー   
参加者:展示作家、エリザベス・プレサ、村田達彦・弘子、金沢寿美、奏下西、友人、他  
進行:進藤詩子   
記録:針谷美香、進藤詩子


<ジェイミ•ハンフリーズ>

デイビッド:ラインを実際に引く必要があったか。コンセプトはわかるが、ビデオカメラが建物のラインを追うだけでも、作品となったであろうか。
ジェイミ:今回は実際に引くことをどうしてもやりたかった。他の作品では、デイビットさんが提案したアイデアに近い手法で試みったことがある。展示された会場と繋がっている空間を探索し、床や壁に存在している線を辿るという映像作品だった。
マーガレット:実際に建物に線を引いている作業が面白かった。それを撮影して見せても面白いと思った。
ジェイミ:ギャラリーだけでなく、裏のオフィスや滞在しているアーティストの生活空間を直線的に繋げるという試みであったが、その行為についてどう思うか。
エリザベス:ギャラリーを切ってしまった人も過去にいた。
マーガレット:ビデオは殆ど白黒のようだが、途中に時々色が入るのが視覚的に面白い。線を引いてなぞる以外に触覚に訴える、例えば手でなぞる、といったアプローチはどうだろうか。
詩子:建物は一本の線で結ばれているが、例えば複数線を引いて、見る人が自由に結ぶことは考えられるか?
ジェイミ:線を引くこと、ビデオを撮ること、二つを繋げることがコンセプトの中心としてあった。見る人はまず線に気付く、ということができたら、そこから自由に解釈してもらいたい。
デイビッド:ずっと見なくても良いビデオ作品として捉えた。また、フランシス•アリスのように、どこで上映しても構わないのか。つまりビデオだけ別の場所で見せることは可能か。
ジェイミ:興味がある。実施した空間と離れた会場に見せて、客観的に見たいと思う。
エリザベス:ビデオに映るラインと、モニターが設置している壁のラインが微妙に合わない。重なりそうで重ならない。非常に興味深いが、それは狙いか?
弘子:ジェイミさんの作品作りに対する真剣さに感銘を受けた。
(テープは全長300m、2週間朝から晩まで線を引いた。)
寿美:執拗な執着が見る人に伝わるようなプレゼン、作品であれば更に面白いのでは?
ジェイミ:気づいてくれる人がいたら嬉しいが、コンセプトとは少し違うかもしれない。
詩子:labor intensiveな製作工程とコンセプトの関連がないのであれば、異なる製作工程は考えられるか?
デイビッド:テープは素材としてパーフェクトな選択。どの表面にも描けるから。
エリザベス:テープであることに今気づいた。
弘子:蟻の足跡のようである。
ジェイミ:面白いことに、外壁にテープを付けている時に、蟻がテープをつたって歩いていたという発見もあった。
友人:デッサンの基本に、蟻が歩くように描け、という考え方がある。建築家が引く線、または、音楽の線のようである。
ジェイミ:それゆえに、オープニングで音楽家によるパフォーマンスを行なった。
弘子:建物を取り払って、線だけ残したらどの様に見えるだろうか。


<デイビッド・パッカー>
デイビッド:自分は彫刻家であると同時にイメージメーカーであり、数十年来、自分に共鳴した画像を収集し続けてる。世界の認識として、6つのカテゴリーに分けている:歴史、土地、都市、宗教、産業、軍。
エリザベス:実際にどのような分野を今回は扱っているのか?
デビッド:今回はじめて全てのジャンルを一度に表現している。見る人に何を読み取るかを委ねている。
弘子:ご自身のデータベースに加えて、遊工房の滞在中に収集し使ったイメージはあるか?
デイビッド:今回むしろカテゴリーが増えた。桜、建物、四角い箱。友人からもらったネパールの画像はインターネットから。レジデンスを含めてどこにいても影響はあり、コレクションに共通したものを集めることができる。世界は小さいものだと思っている。
デイビット:日本からの影響について詳しくは語らない。作品についてあまり語らない姿勢だし、作品が語ってくれると考えている。
弘子:私も同感である。
作家友人:デイビッドさんはカービングとモデリングを同時に行っているという印象を受けた。

<マーガレット・ランゼッタ>
マーガレット:シルクスクリーンは桜をスタイル化したものを使った。桜を分断することでオリジナルなイメージから離しており、繰り返しは、仏教のお経のようで、私のメソッドの一つである。今回は、花の美しさや儚さではなく、戦時中命を散らした若者たちの死を美化することに利用されるなど、桜のイメージの背景にある歴史や政治的な意図について、言及したかった。
弘子:桜は人の感情を揺さぶる。私は父が入院した季節を思い出す。
マーガレット:名高い装飾というタイトルは、皮肉を込めている。
寿美:日本に来る前から桜をテーマにすることを決めていたのか?
マーガレット:日本に来て、至る所で桜のイメージが使われているのを目にし、文化的な要素であることに気づき、使用を決めた。日本人がどう桜のイメージを利用してきたかについても、今回初めて知った。
詩子:シルクスクリーンの色使いが目に痛いほどでとても効果的。
作家友人:より大きなスケールになると良いと思う。
エリザベス:マーガレットさんのカタログの桜のイメージを自分のレジデンスに飾ることで、見逃した日本の桜を見ている。印象深いイメージを作られている。



記録後記
久々に個展を行なった若手作家、レジデンス経験も豊富なベテラン作家、3組の展示同時開催は、互いに刺激を与え合ったという印象を受けた。コンセプトを具現化する過程で、何を選び何を捨てるか、また、どこまでコントロールし、どこから作品自体や鑑賞者に判断を委ねるのか。ギャラリー展示であろうとレジデンス展示であろうと、常にリソースは限られており、そこで最大限に製作・展示活動を行うことについて、今回は実践的な意見が交された。各作家の今後の活動に、今回の展示・滞在がどの様に反映されるか、興味深い。

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